構築から申請までの第1部は今回が最終回となります。
構築技法だけの情報で進めてしまうことで後々ご苦労してしまう現実と構築技法、構築後の教育が大事であること等、恐らくここまで農場の立場から見たお話は他では見ることはないでしょう。
構築テクニックはどこも公開しています。
しかし視点は基準を知る立場である構築側つまり、基準をもとにどのように現場基準で取り入れるか考える農場側の視点でないことが多いと感じますし、テクニックだけでは農場として支障が出ることをあまり説明していないため、後になって頓挫したりして構築断念や取得後の更新停止等取得後のメリットを放棄したりそれまでのご苦労を無駄にしてしまいます。
このため、初期から多くの費用を投資できないと言う理由で小規模畜産農場の多くはネット情報を得て初期投資を抑えて始めると言う事例もあります。
ご相談いただく多くは情報だけで構築をはじめ、結果運用段階でご苦労されたり構築手法が少し基準から外れていたりと、適切にアドバイスできる環境でないため疑問を感じながらも構築し、結果断念したり、頓挫したり、費用的に見て意味を感じなかったりとお考えになる方もいます。そこの問題を解決できる手法がないのが現状なのかもしれません。
最近は、出入りのワクチン営業が構築したり、組合が指導員を派遣したりして積極的に認証取得を進めていますが、多くはその中でも疑問を感じることに答えていないことで、半信半疑となる方もいます。
その中私たちのような事務所にご相談いただき、必要なところのみご指導するピンポイントご支援を活用いただいていると感じます。
初めて構築するということは、アドバイザーからすれば当たり前の基準を解説するだけではご理解いただくことは難しいはずです。
それ以外に見えない問題点が浮上するのが自然ですし、その見えない部分を解決できるのがアドバイザーであり指導者だと思うのです。
だからこそ丁寧に現場にあった構築をご支援するのが本当のアドバイザーではないかと言えます。
農場HACCP認証は指導者のリーダーシップはとても重要で大切ですが、それ以前にいかに現場を知りその現場に合う構築が出来るのかという観点でアドバイスをすることが、とても大事なのです。
いくつか構築のお手伝いをいたしました多くはその視点で農場HACCPを取り入れるという意識より「まず認証」という結果が注目されて始まることが多いのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、農場HACCP認証という認証だけでは畜産物の付加価値を生むことはできませんし、それだけで利益が右肩上がりという夢物語にはなりません。
そこが目的でなく、事故を防ぎその結果自社畜産物が安全であり認証がない他社製品より結果優れていることで認証という価値が初めて生まれるのですし、従業員の意識が改善し、自ら考えそして危険を回避できる自律した従事者となりそれが、更なる安全という信頼を熟成していくのが携る者として感じる農場HACCP認証の取得したメリットとなるのではないかと考えています。
このような考えを持って準備をして構築し、教育しそして今回のお話となる仕上げをして申請をすることが一番の王道ではないかと感じます。
どうぞ最後までお読みいただき、申請をして認証を目指してまいりましょう。
目次
1、農場HACCP認証 準備編 ~何を準備するのか
2、農場HACCP認証 構築編1 ~何から始めますか
3、農場HACCP認証 構築編2 ~構築の本丸
4、農場HACCP認証 教育しましょう ~何を教えましょうか
5、農場HACCP認証 検証と完成 ~最後の調整をして申請しましょう (このページ)
さて、認証文書が完成し、必要な教育を実施するといよいよシステムが動きます。
まず最初は試験運用と呼ばれる「お試し運用」となります。
1、お試し運用と検証をしましょう
お試し運用は1カ月間実施してみましょう。
記録し記録物の保管は必須です。本番と変わらない気持ちで取り組むことが重要ですし、安全な畜産物を作ると言う意識がとても大事なのです。
お試し1カ月が終わるまでは、恐らく問題点が出てきます。当初のシステムと異なる動き、想定外の作業時間ロスや作業が複雑化したことで個々農場担当者による技量や意識のばらつき、記録漏れが発生します。
最初は記録漏れは当たり前に発生します。
厳しく指摘するのも大事でしょうが、あまり過剰に指摘しないほうが良いと言えます。
むしろどの時間で記載できるのか、例えば休憩時間明けに8時から10時までに実施した事項を記録する等、代案を示すことが大事です。
押し付けは反発を招きますし、多くはまだ農場HACCP認証に対する理解が十分でないことが多いため「うるさい無駄なもの」という考えを定着してしまうリスクがあるのです。
農場HACCP認証は現場運用が基本ですので現場目線で一緒に考えることが一番の手法です。
1カ月の間に発生した問題点を解決できるような対策を検討します。
いわゆる検証です。
何が問題で、どのような対策が一番いいのか。
そしてその対策は現場に多く負担をかけないのか、そもそもその対策は法令違反になるような行為ではないのか等考えます。
実際あったことですが、もっと作業時間を削りたいのでこの工程を省略したいという意見がありました。しかし省略する場合の多くは、衛生環境の維持に不安となることが多く、また法令違反となることもあり、現場の意識はまだ自農場基準で考えていると言うこともあります。この点も注意して助言することが大事です。
そして、改善点を反映し、作成した文書が変更となる場合は第7章の規定により変更履歴に記載しておきます。
ちなみにこの作業は第6章に該当していますので、検証したことは必ず記録しておきましょう。
見直しした後、更に1カ月間の試験運用をします。
これを繰り返し3カ月目にはあらかたの問題点の抽出と改善は完了することが多く、3カ月経過時には第1回目の内部監査を行い、正式な検証を行います。
内部監査は多くの場合年1回以上実施しシステムの検証と改善を検討します。第三者の指導のもと構築している場合は監査責任者としてチエックしていきますが、自社である場合は、対象農場所属者でないものを責任者として検証を行います。
検証の際には基準に則り「検証計画書」(何を目的にいつ実施するのか)を発行し、経営者が検証責任者を任命し、検証責任者は検証後「検証報告書」(検証目的と比較してどうだったのか文書にします)を作成していきます。
この用紙がそろうことで、検証を行っているとみなされます。
後にふれますが、初回審査はシステムが動いていていて検証していることが分かることが最低条件です。
2、申請し審査を受けましょう
お試し3カ月目にはだいぶ安定した農場システムになっていることでしょう。
このため多くはこの時点で申請する準備に入ります。
検証し、その記録がそろったところで申請の準備をしましょう。
まずは、審査機関である中央畜産会又はSMC株式会社のホームページから必要な申請書類をダウンロードします。
その際申請から審査までのスケジュールが掲載されていますので必ず確認しておきましょう。
今回は中央畜産会についてお伝えしましょう。
中央畜産会での審査を受審する場合は、「申請書」と情報に関する規定やその他の規則に同意する「同意書」各1部、ご苦労して作成した「認証文書」のコピーを5部印刷していただきます。
また審査員が文書の内容が分かるように作成した「文書リスト」1部も必要です。
この準備で1週間や2週間かかることもありましょう。
準備ができましたら、中央畜産会にいったん電話することが一番良いです(送付先や送付物の確認が出来てスムーズです)が、時間がない等の場合は準備出来次第中央畜産会衛生指導部あて送付していただくことになります。
申請書類が到着して内容確認後先方から連絡があります。
その後の流れや審査希望日等の打ち合わせとなります。
申請受付から審査実施日までは1.5カ月程度かかります。審査員の手配や申請した文書を事前に読み込み審査に備えるための期間が必要となります。
いかがでしょうか。
審査準備が出来れば、あとは認証審査を受けて認証書を受け取るという流れになります。
ここまで1年もしかすると2年又はそれ以上経過したと言う方も多いでしょう。
今後農場HACCP認証の必要性・重要性はますます高まることでしょう。
それは、改正食品衛生法が施行されることで、HACCPの考えに基づいた対策を講じることになり大手ほどその基準は厳しくなります。皆さんが作成したHACCPの考え7原則12を踏まえて原料の調達をしていくことでしょう。
その時、何かを調達基準にした場合「認証」がある畜産物とない畜産物どちらが安全かという天秤にかけたとき多くは「認証のある畜産物」を選定する可能性が高まります。
同じ認証JGAPも選定基準に選ばれる可能性が高いと言えますが、安全に特化した農場HACCP認証ほどではないと感じます。
まもなく始まる改正食品衛生法に自社の製品が選定される目安となることで未来に向けて選ばれる畜産物となるよう頑張ってまいりましょう。
今回は5回に分けて農場HACCP認証構築に関する技法を紹介しました。次回は認証後の維持・更新審査やJGAP構築についてお話をしていきます。
私どもアドバイザーは、農場HACCP審査員でもあり、JGAP審査員補でもあります。
もしかするとこのページを基にご苦労され構築した皆さんの農場に審査員としてお伺いすることもあるかもしれません。
いつも現場目線で考えている私たちの苦労話をもとに自社ではその失敗を回避した、より良い構築や教育となり農場HACCP認証を受けて苦労があるも、その先の従業員の意識・安全に対する考えが定着することで日本一の安全安心な農場へ育っていくことを願う次第です。
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