ここまでたどり着く時間は大変長いことでしょう。通常1年もしかするとそれ以上の事と思います。
私自身HACCPチーム責任者として構築を開始したときもそうでした。
構築は1年、1年半程度かかりました。
今日お話したいのは出来上がった認証文書はそのまま申請することも可能です。
しかし、機能するかどうかは別の話です。一般的に構築側と動かしてもらう農場側は別物であることが多くそのまま押し付けた場合ほぼ頓挫してしまいます。
初回認証は文章の一部を見て適否を判断しますが、システムが動いているを理解してもらうことが必須です。ですから、認証文書が出来ましたでは申請とはなりません。
通常、認証文書が出来上がった場合作業していただく全ての方にシステムの説明、作業方法、HACCP計画があればその概要とモニタリングの方法、記録付けの方法を説明し、力量を評価します。
教えることで理解していただき、システムが動き始めるのです。この工程は非常に大事です。
教育という言葉はなじみ深い言葉ではないかもしれません。教えると言えば「作業を教えて一人前に育て作業員に仕上げる」というところでしょう。
しかし、本当に必要なのは作業員で終わるような人材でなく、自ら考え行動する人材が本当に農場が必要とする人材になるといえます。
異常を察知し考え行動する。
これが農場での生産性に寄与し異常を寄せ付けないことが農場HACCP認証を実施した方々から聞かれる「従業員が考えるようになった」と言われるゆえんでもあります。
そのためにも、本日お話する教育はその第一歩になるのです。
最後までどうぞお読みください。
目次
1、農場HACCP認証 準備編 ~何を準備するのか
2、農場HACCP認証 構築編1 ~何から始めますか
3、農場HACCP認証 構築編2 ~構築の本丸
4、農場HACCP認証 教育しましょう ~何を教えましょうか (このページ)
5、農場HACCP認証 検証と完成 ~最後の調整をして申請しましょう
さて、教育といっても何を教えればよいのでしょうか。
この章はHACCPチーム責任者が担当します。
私たちHACCPチーム責任者は、システムを動かすために、衛生管理の基本的な知識を教えます。
衛生とは「手を洗い雑菌を・・」のようなものでなく、今行う作業はここが重要でここに危害があるので、このように除去しましょうというポイントをお話します。
例えば畜舎の清掃では「綺麗に掃きとり、ほこりを外に持ち出すことで、家畜に対してのリスクを減らすことが出来ます。ですから今までの作業同様に丁寧にお願いします」とお話し、作業の重要性とHACCPの考えを混ぜてお話します。
このことで、HACCPはめんどくさいと言う概念が薄らぎ、今作業していることは衛生管理なのだということを認識してくれます。
何でもHACCPだからという話になると、多くは「HACCPだからやらされる」「HACCPだから無理を押し付ける」「HACCPだから現場を考えてくれない」という、HACCPアレルギーをおこします。
こうなると、反発心が芽生え理解が進まず機能が停止してしまいます。
多くは、経営者が取組したい意志が強ければリーダーシップが発揮され今のお話はあまり聞かないのでしょうが、そうでない場合「認証書があればよい」という程度では、従業員に丸投げとなり今のようなお話として表面化してしまいます。
ですから、第1回目でお話したように「何のために取得するのか」という思いを話し(コミットメント)をしましょうと言うわけです。
教育は押し付けではうまくいきません。そこはHACCP責任者の技量に左右されますが、先ほどの例のように大事なことをお話し、今の作業とリンクして分かりやすく伝えるのです。
話は長くなりましたが、では何を教えましょうか。
1、衛生管理とは何か
2、作業の手順を再確認
3、モニタリングや記録付けの方法
4、HACCP計画の概要とその作業方法等
となります。
1と2は今例を挙げました。
3は特に記録漏れについては良くお伝えします。「記録漏れ=作業をしたかどうか判断できないので未実施とみなされかねない」
ということを必ず伝えます。
今まで、記録することの重要性はほとんどの農場では関心事として薄いはずです。
それは作業をすることが当たり前で、やらないという選択肢がないからです。ですからやっているのだから記録するという意識が薄れるのです。
しかし、HACCP認証後は毎日の作業は記録という形でその当たり前が記憶から記録に変わるのです。
第三者が認証していますので、口頭でいつもやっているでは説得力が弱いのです。
ですから記録していることで2年前のある日もしっかり作業しているということが後からでもわかるのです。
このように行われることは全てHACCPに関することが多いため記録するものが増えてしまう傾向がありますが、なるべく1枚の書式に改めて作業日誌として整理すると理解を得やすく、作業の支障も少ないため記録漏れも防げます。
このように記録してもらう重要性をお話すると同時に記録書式もわかりやすく、記載漏れがでないように配慮してあげるのもHACCP責任者は考えるべきなのです。
システムのために押し付けるだけでは、あまりいい責任者ではないかもしれません。
システムの先にある作業者の方のためにと言う目線も大事なのです。
4はHACCP計画を作成した場合その方法を説明します。畜種によりますが多くは1つ以上2つ程度設定することもありましょう。
必須管理点は危害を防ぐための限界点を定めています。ですからその限界を超えていないことを何らかの形で確認し記録しなければなりません。
その重要性と方法、記録の方法は特に大事ですから丁寧に説明しましょう。
記録には必ず責任者も目を通し、その製品が間違いなく手順通りに確認され安全と判断できるという意味で確認できるようなシステムにしましょう。
いかがでしょうか。
これ以外にも作業されている方の技量を正しく測定し力量判定を行い不足している場合はどのように力をつけるのかその方法を設定します。
年間スケジュールを作り、初年度は基礎教育と記録付けの習慣化は数カ月毎に繰り返して定着化を図るスケジュールでも良いでしょう。
この分野は専門の方に依頼することも可能です。
ですから何から教えるのかと悩まれた場合、今お話したことから始まり技量を維持向上させるということも可能ですし、この分野だけ私ども専門にお任せいただくことも一つの手なのです。
農場HACCP認証は、システムが出来上がるとすぐに動かすことも可能ですが、その前にシステムを良くご説明することがとても大事なのです。
わからないまま見切り発車した場合多くは、HACCPは手間や無駄という概念を植え付けてしまうことが多いと感じます。
それは、新たな取り組みであること、記録等うるさくないものがうるさくなること、作業がなんか細かくストレスと感じること。
様々ありますがいずれも最初からご説明して理解を得られなかったことが起因していることが多いのです。
さて、教育が終わればあと少しです。多くはここから試験運用が開始されましょう。
次回は、このシリーズ最終回 申請前に行うことについてお話しします。
今までの努力が開花し始めています。
あと少し、皆さん頑張ってまいりましょう。
- Home
- » 農場HACCP認証の構築技法を公開します
- » 農場HACCP認証の構築 第4回教育 ~何から教えましょうか